ダイイチルビーは日本の元競走馬。1991年の安田記念(G1)とスプリンターズS(G1)を制し、同年のJRA賞最優秀5歳以上牝馬およびJRA賞最優秀スプリンターに輝いた。
優秀な血統背景により、当時では破格となる1億円で取引され、グレード制導入後の安田記念を牝馬として初めて優勝。また同年のスプリンターズSを制した。生涯獲得賞金は4億円に達し、牝馬の歴代最高賞金記録を樹立している。
父は1970年代半ばに大活躍した名馬トウショウボーイ。牝系は『華麗なる一族』と称される名門・マイリー一族にあたる。母は1980年の二冠牝馬ハギノトップレディ。二代母は1973年と1975年にJRA賞を受賞した名牝イツトー。叔父に1983年の宝塚記念覇者ハギノカムイオーがいる超良血馬である。
当記事では1990年代前半に存在感を放った快速牝馬・ダイイチルビーの蹄跡を振り返る。
旧4歳時の2月、鞍上に武豊騎手を迎えてデビュー戦を迎えたダイイチルビーは、初戦を5馬身差、続くアネモネ賞(500万下)を2馬身差で完勝。その後、牝馬三冠路線への出走を視野に入れてトライアル競走に登録するも抽選除外となり、桜花賞当日の忘れな草賞(OP)へと回った。レースでは単枠指定の圧倒的1番人気に支持されたが、逃げるトーワルビーを捉えきれず初黒星。続く4歳牝馬特別(G2)でも単勝1番人気だったが、のちにエリザベス女王杯を制するキョウエイタップの末脚に屈してクビ差2着となった。
5月20日、オークス(G1)に出走。同レースでは、デビューから無傷の5連勝で桜花賞馬となったアグネスフローラが単勝1番人気に支持された。レースでは最後方から末脚を爆発させたエイシンサニーが1着となり、ダイイチルビーは出遅れが響いた影響もあり、後方から進出するも5着に敗れた。この後、休養に入る。
秋の始動戦となったローズSでは単勝1番人気に支持されるも、逃げ粘るカツノジョオー、2番手を進むイクノディクタスから引き離され5着となった。からくも牝馬三冠の最終戦・エリザベス女王杯への優先出走権を手にしたが、右脚に化膿の症状(フレグモーネ)がみられたため、陣営は年内全休を選択した。
休養明け、古馬入り後は河内洋騎手を鞍上に迎え、始動戦となった洛陽S(OP)で2着となった。続いて京都牝馬特別(G3)に出走すると、メインキャスターやサマンサトウショウなどを相手に差し切り勝ちをおさめ重賞初制覇を飾った。1ヶ月後の中山牝馬S(G3)3着を挟み、京王杯スプリングC(G2)へ向かうと、G1・2勝馬バンブーメモリーや1988年の朝日杯3歳S(G1)覇者サクラホクトオーらを相手に先行抜け出しを図り、後続に1.3/4馬身差をつけて2つ目の重賞タイトルを獲得。5月の安田記念へと駒を進めた。
レースでは4番枠から発走。道中13番手、内目の位置で最終直線を迎えた。横一列に並んだ先行集団の外目から勢いよくダイタクヘリオスが伸びて押し切りムードとなる中、馬群を縫うように外馬場へ持ち出したダイイチルビーが強襲。インコースを縫うように伸びるバンブーメモリーの追撃も封じ込め、G1初制覇を飾った。この勝利はグレード制導入後、史上初の牝馬による安田記念優勝となった。
その後、7月の高松宮杯(G2)に出走。同レースは1975年に二代母イツトー、1981年に母ハギノトップレディ、1983年に叔父ハギノカムイオーが制しており、母娘三代制覇のかかる一戦となった。単勝1.4倍の圧倒的支持を受けたが、逃げるトーワルビーを4コーナーで競り落とし先頭で直線を向いたダイタクヘリオスにハナ差届かず2着に惜敗。リベンジを果たされる結果となった。
秋の始動戦となったのはスワンS(G2)。ここでも単勝1番人気の支持を得るが、同年4月にデビューを迎え、圧倒的な快速でオープンまで駆け上がったケイエスミラクルの後塵を拝し2着。続くマイルCS(G1)ではケイエスミラクルに先着したものの、序盤から緩みのないペースで他馬を振り切り直線で粘り込みを図ったダイタクヘリオスに2馬身半差をつけられるかたちで2着。3戦連続2着となった。
次戦に選んだのは12月のスプリンターズS(G1)。ここではスワンSで圧倒的なレコードを見せつけたケイエスミラクルが単勝1番人気に支持され、ダイイチルビーは単勝2番人気となった。レースではゲートで後手を踏み馬群後方で追走。ハイペースで展開する中、最終直線で失速するケイエスミラクルのさらに外から進出し、勢いのまま上がり最速の末脚を繰り出して4馬身差の圧勝を飾った。なお、ケイエスミラクルは同レース中に故障を発生、予後不良による安楽死処分となった。
G1・2勝目を飾ったダイイチルビーは、この時点で総獲得賞金は4億円を突破し、牝馬による歴代最高賞金記録を塗り替える快挙を達成。また、同年のJRA賞最優秀5歳以上牝馬およびJRA賞最優秀スプリンターを受賞した。
旧6歳時の始動戦となったマイラーズCでは、ダイタクヘリオスが連覇を達成するなか6着。連覇のかかる京王杯スプリングCでは8番手追走で最終直線を迎えるも伸びを欠き5着となり、続く安田記念ではヤマニンゼファーがG1初制覇を飾るなか15着に大敗。この直後、5月27日付でJRAの競走馬登録を抹消され引退、繁殖入りとなった。
競走馬引退後、北海道で繁殖牝馬となり、1997年のオークス3着馬ダイイチシガーなど7頭の仔を残した。その後、蹄葉炎のため20歳でこの世を去った。
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