ダービー当日は、カメラマンにとっても緊張感のある一日です。「ちゃんと撮れますように」と祈りつつ、撮影場所の確保のためにいつもより早く競馬場に入るのですが、僕らフリーのカメラマンは、どうしても後ろのほうになってしまう。つまり、カメラを構える位置が普段とは違うんですね。
そんななか、ダービーで多いのが、外から差してきて届かない…というケース。「あ、あそこから差し切るな」と思ってレンズを外に振っても、実際はもっと手前にゴールがあって、失敗してしまうケースもあります。
ロジャーバローズが勝った昨年も、ヤラかしてしまったカメラマンは多いはず(笑)。「絶対に失敗できない」という意識のなか、そういった難しさがあるので、ダービーはより緊張感が高まるんですよね。
また、すべてのレースにいえることですが、あらかじめ狙いを定めた馬の直線の進路をシミュレーションして、それによってレンズを使い分けています。GIの場合は、そのジョッキーがどんなガッツポーズをするのかも大事な要素。なぜなら、レンズ選びを間違うと、ガッツポーズがはみ出してしまうんですよ。
たとえば、蛯名騎手や横山典弘騎手は、喜びが爆発すると馬の上で立ち上がることがあるので、レンズによっては馬が入らない…なんていうことも(笑)。そういう判断ひとつをとっても、ダービーはより精度を上げて挑まなくてはいけませんし、やっぱり特別な一日です。無事に終わったら、本当にホッとしますね。
ただ、ホッとひと息ついていると、あれよあれよで目黒記念(笑)。当然、目黒記念も大事なレースなので、とにかく最後まで気が抜けない一日です。
1969年、神奈川県生まれ。東京工芸大学卒業。一級建築士を取得後に独立するが、建築に興味を持てず、子供の頃から好きだった競走馬の姿を写真に収めたくてカメラマンを目指す。1996年、JRAのプレス章を取得。netkeiba発足時の社長に声を掛けられてからはnetkeibaをメインに撮影。他に、クラブ法人数社の撮影も請け負う。