ジョッキーの涙はなかなか見る機会がありませんが、ダービーだけはやはり特別ですね。普段はあまり感情を表に出さない福永騎手や川田騎手でさえ、やはり込み上げてくるものを抑えられない。そんな姿を見ると、「ああ、これがダービーというレースなんだな」と思います。
今回の4人のなかで一番印象に残っているのは、やはり川田騎手。当時から僕のなかでは“鉄の男”でしたが(笑)、ゴール後、ずーっとアップにして追っていたら、そんな彼が天を仰いで堪えていた。だいぶ昔の話ですが、トウカイテイオーでジャパンCを勝ったとき、普段は首元をポンポンするだけの岡部騎手が、思わずという感じでガッツポーズをしたんです。「あっ!」と目を見張ったものですが、川田騎手の涙は、そのときに近い衝撃がありました。
ダービーの日は、ゴール後、厩舎のスタッフとジョッキーが合流するシーンも印象的です。ウイニングランを終えて、一度は収まった涙が、スタッフの顔を見た途端、またグッと込み上げてきてしまう。確か福永騎手も、その瞬間に笑顔が泣き顔に変わったし、池添騎手もウィナーズサークルに戻ってきてから、また号泣していたような気がします。そういうシーンに遭遇すると、改めて競馬は一人で闘っているんじゃないだなと思いますね。
1970年生まれ、埼玉県出身。大学在学中からカメラマンとして競馬誌の仕事を開始。これまでに携わった競馬誌は、『競馬アクション』『競馬フォーラム』『競馬大予言』『馬券ブレイク!』『UMAJIN』など多岐に渡る。勝ち馬のゴールシーンを撮るのが使命も、馬券を買っている馬をついつい狙ってしまうのが目下の悩み。