1歳は底堅く、当歳は苦戦。7月13、14の両日、北海道苫小牧市のノーザンホースパークで行われた「セレクトセール」(日本競走馬協会主催)の結果を一言で整理すれば、そんな評価となる。2日間の売却総額は187億6100万円(税抜き、以下同)で前年比8.5%減。
初日の1歳部門は104億2800万円で2.8%減にとどまったが、2日目の当歳部門が前年比14.8%減の83億3300万円にとどまり、足を引っ張った。1歳と当歳で明暗が分かれたのは、種牡馬界の「2トップ」として君臨したディープインパクト、キングカメハメハの産駒の上場が、1歳のみだったためだ。
一方で、売却率は1歳が92.0%(前年92.9%)、当歳が89.8%(前年と同率)と、活況だった昨年とほとんど差がなかった。市場の底堅さは再確認されたが、コロナ禍の影響が全体的な経済情勢と異なり、今回の市場にはまだ及んでいなかったとも言える。来年以降の市場を覆う影が、姿を見せていたのは確かだ。
ギャラリーは入場制限
今回の市場は事実上、コロナ禍以降に国内で開催された初の大型市場だった。4月のJRAブリーズアップセールを皮切りに組まれていた2歳市場は軒並み、中止かオンライン転換に追い込まれた。感染問題がある程度落ち着いたのを受けて、6月23日には九州市場が、7月7日には八戸市場が、それぞれ購買者を現場に受け入れる形で行われたが、いずれも小規模だった。
だが、今回は一般の観覧者をシャットアウトし、シャトルバスもせり当日は休止。せりの入場者は事前に登録済みの購買者と限定された数の同伴者のみとされた。入場者は入り口で検温などの手順を踏み、マスク着用がルール化された。会場内部も例年より広い間隔で椅子を並べるなど、物理的距離の確保に神経を遣っていた。
せりカタログからも変化は見えた。昨年までは会場にブースを出展するファッション誌や外車ディーラーの広告が掲載されていたが、今年は競走馬保険を扱う損保会社の1件のみ。せりの主催者が馬を売る側という状況で、顧客に同伴者数の抑制やマスクの着用を徹底するのは難しい面もあったはず。感染防止の観点で、問題がなかったかを検証するには、もう少し時間がかかる。
最後のディープ祭り 1歳部門
筆者は今回、現場に行けなかったが、中継画面を見る限り、初日のせりの勢いは昨年と大差ないものだった。上場番号1番のハーツクライ産駒(母ポロンナルワ、牡)がいきなり、1億2500万円に跳ね上がった。初日の主役となる13頭のディープインパクト産駒の中では、最初に登場した19番の「キャンプロックの2019」(牡)を、「ミッキー」の冠の野田みづき氏が1億9000万円で落札。
ディープ産駒は出てくるごとに高額落札が続き、56番の「フォエヴァーダーリングの2019」(牡)は4億円に。父がフランケルの異父姉モンファボリが6月20日に函館芝1200mの新馬戦を1分8秒7の破格のレコードで勝ったことが評価された。結局、岡田スタッド上場の牝馬(母ティズトレメンダス)が6400万円で売却(落札者ノーザンファーム)されるまで、5頭連続で1億円超えとなった。
さらに、114番の「シーヴの2019」は激しい競り合いの末に5億1000万円で「ショウナン」の国本哲秀氏が落札。同馬が2日間を通じた最高価格となった。結局、ディープ産駒は13頭中1頭が未売却だったものの、12頭の合計売却額は24億9700万円で、平均価格は約2億808万円。昨年末のホープフルSから今春の皐月賞、日本ダービーとGIを3連勝したコントレイルの後光が、価格を押し上げたのは確かだ
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