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無敗で駆け抜けた男たち
田中将大 選手 × 福永祐一 騎手 × 松山弘平 騎手

GREAT ACHIEVEMENT
“無敗”の男たちが語る偉業の軌跡、そして支えになったモノ

2021.1.18

#無敗#24勝0敗#菊花賞#秋華賞

──昨年、コントレイルとデアリングタクトを無敗の三冠馬に導いた福永騎手と松山騎手ですが、田中投手もまた、2013年にシーズン無敗の24連勝という大記録を打ち立てました。

福永:すごい記録ですよね。

田中:かなり昔の話なので、恥ずかしいんですけど(苦笑)。

──二度と塗り替えられることのない記録かと思いますが、シーズン中に記録というのはどの程度意識されていましたか?

田中:正直、自分のなかではほとんど意識していなかったです。ただ、連勝を重ねていくにつれ、登板の前日に記者の方たちに囲まれて、「明日はどうですか?」とか連勝への意識を聞かれるようになってきて。1週間に1回の登板だったので、週に1回、記者の方たちの質問に答えることによって、意識されていた感じです。ただ、次の日に試合に入るとそんなことは関係なくて。相手チームをいかに抑えるかしか考えていなかったです。

福永:記者から連勝についての質問を振られるのも嫌でした?

田中:いえ、そんなことはなかったです。そういう状況も受け入れなければと思っていました。

──よくジョッキーの方たちからは、「自分のなかの『負けられない』という気持ちが、一番緊張感を煽る」と聞きますが、やはりそういう気持ちはありましたか?

田中:負けられないという気持ちはなかったですね。「今日はどうしたら勝てるんだろう」と、そればかり考えていた感じです。

松山:記録については、昔からあまりこだわるタイプではないのですか?

田中:そうですね。積み重ねでしかないですし、投手の勝ち星というのは、たとえ自分が0点に抑えたとしても、自分のチームが点数を取れなければ“勝ち”はつきません。ナイスピッチングで1点に抑えたとしても、チームとして点が取れなければ負け投手になるわけです。自分でコントロールできないことを目標にするのは違うかなと僕は思いますし、言い換えれば、連勝記録が作れたのは本当にチームメイトのおかげなんです。

松山:それは僕たちも同じです。馬が頑張ってくれたおかげですからね。

福永:うん、そうだね。

──福永騎手と松山騎手は、一連の戦いのなかで“無敗”という事実が重く圧し掛かってきたことはありませんでしたか?

福永:秋初戦の神戸新聞杯は一番プレッシャーがかかりましたね。やっぱり負けられない一戦でしたから。無敗でダービーを制して無敗の三冠が懸かっているときに、前哨戦で負けてしまったらシラケてしまうじゃないですか(笑)。

田中:確かに(笑)。

福永:だから、「ここは負けられへんな」と。気持ちの面もそうですが、1枠に入ったこともあって、あのレースは本当に難しいレースでした。

松山:今までもそういう経験はありました?

福永:もちろんあったよ。若い頃は、単勝1倍台の1番人気ともなれば、「負けたらどうしよう…」と思って硬くなったりして、いい騎乗ができないこともよくあった。当時も自分なりに「今、何をすべきか」とか考えていたけど、今思うと、ちょっとピントがズレていたような気がするし。でも今は、四半世紀にわたって騎手をやってきて、勝つために何をすべきかを考えたときに、それほどハズれなくなってきた。あとはそれを実行できるかどうかだけで。

──福永さんも、緊張でブルブル震えていた頃があったんですね(笑)。

福永:ありましたよ。キングヘイローのダービーとか、まさに震えました。緊張しすぎて、前の日に熱が出たし(笑)。

松山:そういう話を聞くと安心します(笑)。

福永:弘平もけっこう“無敗”が重圧だったんじゃない?

松山:そうですね。僕はかなりプレッシャーがありました。牝馬で無敗の三冠を獲るのは史上初だと言われていたので、ここで負けるのと勝つのとでは、デアリングタクトという馬の価値がまったく違うものになるなとすごく思って。だから、負けられないとも思いましたし、何より迷惑を掛けられないなという思いがありました。

──みなさんにお聞きしたいのですが、無敗という特別な状況を突き進むなかで、心に残るアドバイスをくれた方や救われた言葉などはありますか?

田中:救われたといえば、チームメイト全員に僕は救われましたね。試合のあと、「田中が投げるから負けられない、絶対に勝つんだという気持ちで今日は打ちました」みたいなチームメイトのコメントを見たときは、すごくうれしかったです。

福永:2013年は、チームメイトもシーズンを通して緊張したでしょうね。

田中:そうだったと思います。

福永:自分も、周りが気を遣ってくれているなぁというのは感じました。トレセン内でもあまり話しかけられなかったし、妻にしても普段通りにしようと気を遣ってくれていたと思います。

松山:僕は、池添(謙一騎手)さんに「緊張しないとGIは勝てないよ」と言われて、「あ、緊張していいんだ」と思うようになって、すごく楽になりました。

──先ほど田中投手も「緊張しないといい結果が出ない」とおっしゃってましたね。

田中:はい。緊張するということは、その物事に対して、自分がどれだけ真剣に取り組んでいるか、どれだけ大事に思っているかの裏返しだと思うので。どうでもいいことだったら、緊張なんてしませんからね。僕はそう理解して、しっかり緊張するようにしてます(笑)。

松山:池添さんがおっしゃったことも、きっとそういうことなんでしょうね。