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AKIHIKO TAKEDA 武田明彦

ダービーの高揚

  • 開門ダッシュ
    開門ダッシュ 2015年
  • 開門ダッシュ
    開門ダッシュ 2019年
  • 開門ダッシュ
    パドック 2008年
  • 開門ダッシュ
    競馬場内 2016年
AKIHIKO TAKEDA

ダービーの高揚

プロになる前の約5年間、僕はアマチュアとして競馬の写真を撮っていて、GIともなると前日から徹夜で門の前に並んでいました。なかでもダービーだけは特別で、金曜日の朝5時くらいには列に加わっていましたね。ダービーの場合、一番早い人は1カ月前から並んでいますから、それでもすごく後ろのほうなんですけど(笑)。開門前の徹夜組の人数も、やはりダービーはケタ違い。あそこまでファンの熱気が満ちているのは、数あるGIのなかでもダービーだけです。

現在は、ダッシュする側からそれを中から撮る側になりましたが、あの頃の気持ちや熱量を忘れないように、ダービーの開門ダッシュだけは必ず撮り続けています。とはいえ、開門ダッシュには危険が伴うということで、本当はしてはいけないんですけどね。そこは暗黙の了解で(笑)。

以前は開門の瞬間を狙っていたカメラマンも多かったのですが、最近はムービーを除くと、僕のほかに新聞社のカメラマンが2人いる程度。僕にとってはライフワークのようなものなので、こうして毎年撮っていますが、ゴール前の写真などと違い、使ってもらえる機会がほとんどないのが実情です。だから、今回のような企画は本当にありがたくて、撮りためてきた甲斐がありました。お客さんにとってもダービーというレースは特別で、これはそんなワンシーンを切り取った「お客さんが主役の写真」。ぜひたくさんの人に見てほしいです。

ジオラマ風の写真も、ただただ自分が好きで撮り続けている作品群です。開門ダッシュの写真と同じで、これもまたなかなか使いどころがないのですが、写真展を開催したときなどには必ず出展するようにしています。

撮り始めたきっかけは、ジオラマ風写真の第一人者、本城直季さんの作品を写真誌で偶然見たこと。すごく興味が湧いて、「競馬場こそ、ジオラマっぽく撮れるんじゃないか」と閃いたんですよね。で、我先に…と思っていたのですが、後日、本城さんの写真集を見たら、すでに中山競馬場をジオラマ風に撮った写真が表紙を飾っていました(笑)。

まぁ先を越されてしまったわけですが、逆に言えば、競馬場とジオラマの相性の良さが証明されたようなものですし、僕は一年中競馬場にいるので、シャッターチャンスは自分のほうが果てしなく多い。よりバリエーションに富んだものが撮れるかもしれないと思い、以来とにかく撮り続けています。

ダービーの日のパドックといえば、馬主さんが中に入ってくれますよね。パドックのなかに人が立ってくれるとジオラマ感がすごく増しますし、何より府中のスタンドは高さがあるので撮りやすいんです。ただ、ほかのレースのゴール前も撮らなければいけないので、ダービーの日はゼーゼーいいながら競馬場内を移動しています(笑)。それでも、チャンスはその一瞬だけ。撮り逃がしたら、二度とその瞬間は取り戻せませんからね。

こうして何年も撮り続けてきたダービー当日の開門ダッシュとジオラマ風写真ですが、今年は残念ながら、フリーのカメラマンは競馬場に入れません。仕事が減ったことによる金銭的な厳しさよりも、ライフワークが途絶えてしまうことのほうが正直キツイです。ファンの方も気持ちは同じかと思いますが、僕も一日も早くあの熱気のなかに戻りたい。今はそう願うばかりです。

武田明彦 AKIHIKO TAKEDA

1977年栃木県生まれ。大学進学のため上京し、偶然府中市に住むことになり競馬と出逢う。その後、独学で競馬写真の撮影を開始し、2006年よりJRAのプレス章を取得。主な作品掲載媒体は「優駿」「競馬の天才」、その他にも「キャロットクラブオフィシャルカメラマン」などを務める。