岩田康誠騎手、当時園田競馬所属の30歳。8度目の騎乗でついに手にした中央G1だった。「やってもうた。自分でも何が何だか分からない。G1に乗せてもらえるだけで光栄なのに、こうして勝つなんて、とても信じられない」。お立ち台で殊勝に語った。 51歳となった今でも見せる、思い切った騎乗だった。2周目の下り坂。この距離は初めてのデルタブルースに思い切ってゴーサインを出した。 手綱をしごく。残り300メートルを切ったところで2番人気コスモバルクをかわして先頭だ。ホオキパウェーブ、オペラシチーも迫るが差を詰め切れない。ゴールの瞬間、岩田は左手を力強く握りしめた。 「春の天皇賞では僕の経験不足でぶざまな思いをした。…