04年5月30日、第71回ダービー。直線を向くと、キングカメハメハはあっという間に外から先頭に立った。「ああ、アンカツさん、自分の競馬ができている。これは勝ったかもしれない」。スタンドでレースを見ながら、そう確信できた。 頭をよぎったのはキングカメハメハが前走・NHKマイルCを5馬身差つけて快勝し、3日が経過した水曜日の栗東トレセンでの安藤勝己騎手とのやりとりだった。日が高く昇り、控室にはアンカツさんだけが残っていた。チャンスだと直感し、余計な言葉を抜きにして、こう直撃した。 「アンカツさん、キングカメハメハならダービーも勝ちますね」。安藤は最高の笑顔を返して、こう言った。「ああ、勝てるね。キングカ…