人間という生き物は長い期間、同じ環境に身を置くと“慣れ”が生じるもの。どれだけ周りに恵まれていたとしても、そのありがたみが徐々に薄れてくる。凡人の私には想像するにとどまるが、トップ層のどんな人だってきっとそう。しかし、その熱い思いを揺り戻したジョッキーがいる。富田暁騎手(28)=栗東・フリー=だ。中堅という立ち位置に片足を突っ込み始めた28歳は、アメリカ遠征というかけがえのない経験を胸に歩みを進めている。 昨年11月から今年8月中旬までの約9カ月間、アメリカ西海岸の計4競馬場で修行。最初の4カ月は競馬に乗ることすら難しく、勝ち星も挙げられなかった。さらに、3月の一時帰国後は、さらなる窮地に…