「ニッポン!ノースフライトです」。シンプルだが心を打つ名実況が場内にこだました。わずか1年前にデビューしたばかりの牝馬が欧州の強豪を文字通りねじ伏せた。見ていて身震いがするほど強かった。 この年の安田記念は、それまでとは全く違う意味合いを持っていた。前哨戦の京王杯スプリングC。この年から国際競走となったG2戦には5頭の外国馬が参戦し、1?4着を独占していた。 しかも、その4頭は東京競馬場に在厩して、そのまま安田記念に向かう。京王杯が終わった後、全ての陣営が判で押したように「安田記念ではもっと良くなる」と話していた。本番も同じ結果となることは誰の目にも明らかだった。 当時の日本競馬の“欧米の強豪…