もう2年前になる。福永調教師の騎手引退会見の原稿でこう書いた。 「今の福永ほどすべてを達観しているアスリートは記憶にない」 大一番を前にしても緊張感を漂わせず、勝負への執着より過程や内容を重要視する。当時は騎手生活27年目。悟りの境地に達している、とさえ思うほどだった。 そして、今年の3月に厩舎を開業。再び1年目として、新たな一歩を踏み出した。福永師はこの9か月を笑顔で振り返る。 「自分が調教師になってどうなるのかなと思っていたけど、そんなに変わらんかったなぁ。勝てない時期でも焦るという感覚がなかった」 実は4月末から勝ち星に見離されていた時期がある。周囲から勝ってい…