競馬場のマークシートで馬券購入をするとき、必ず必要なものがある。それは鉛筆である。多くの競馬場には、「ペグシル」という緑色の簡易鉛筆がここぞと置かれているが、それはなぜ置かれるようになり、誕生にはどんな苦労があったのだろうか。製造する岡屋株式会社(本社・大阪市)の井尻和子社長に話を伺うと、そこには過去の苦悩と会社の運命を変えた出会いがあった。 後楽園場外馬券発売所で馬券の自動発売機の本格運用が開始された1975年、前年から開発を進めていたペグシル一本で岡屋株式会社は産声を上げた。開発当初は事務所にて手作業で作っていたというペグシル。現社長の夫である保宏氏と二人三脚で試行錯誤の日々だった。「手作業…