これほどまでに敗者が、勝者以上に注目を集めたレースがあっただろうか。12年の阪神大賞典。勝ったのは最内枠からロスなく運んだギュスターヴクライ。一方、圧倒的な存在感を示したのは2着に敗れたオルフェーヴルだった。 前年に牡馬3冠と有馬記念を制し、現役最強の座を確たるものにしていたオルフェーヴル。その始動戦に選ばれたのが阪神大賞典だった。このレースで陣営がテーマとしたのは“無理に抑えず、普通のレースをしよう”ということ。というのも、前年の有馬記念は後方から豪快に捲っての勝利。強さを示した反面、秋に見据える凱旋門賞に向けては“普通のレース”を教えなければいけないという考えがあったからだった。しかし、結…