「そこから下がれ! 大殿(おおとの)がご覧になれぬではないか」 鬼の形相となった武者が声を上げると、その場の空気がピンと張りつめた。 「大殿」と呼ばれた人物はスーツ姿で椅子に腰掛け、静かに前を見つめている。視線の先には、自らの嫡男で、名代として相馬野馬追の総大将をつとめる旧相馬藩第34代藩主・相馬行胤…