ちょうど30年前の1994年、ブリーダーズカップが開催されたアメリカのチャーチルダウンズ競馬場でのことだった。 スタンド上階の馬主や調教師が集まるエリアの座席に、20人ほどの日本人の関係者が座ってコースのほうに顔を向けていた。そのなかに、取材で親しくなった獣医師がいたのだが、私は人の名前を覚えるのが苦手で思い出せなかったので、後ろから「先生」と呼びかけた。すると、そこにいたほとんどの日本人が振り向いた。自分のことではないと気づいた人たちは気まずそうで、申し訳ないことをしたが、そこにいた人たちの3分の2ほどは調教師だったようだ。 競馬サークルは確かに「先生」だらけの業界ではあるが、世間一般でも、教職…