栗東で、今年騎手を引退した人にインタビューしてきた。今は帰りの新幹線の車中である。メディアの仕事では、作品が世に出るまで外部に内容を漏らさない、というのが不文律になっている。それでこんな回りくどい表現になったが、今年騎手を引退した人と言えばすぐわかるだろうから、書いてしまう。 熊沢重文さんである。 互いに20代のころから、競馬場やトレセンのほか、祇園の川床のある店で同じ席になるなど、挨拶と、簡単なやり取りをしたことはあったが、膝を突き合わせて話すのは今回が初めてだった。 意外にも、と言っては失礼になるが、とても話が面白かった。レース後の検量室などでは、あまり表情を変えず、結果がよくても悪…