2022年ある一頭の馬が引退した。戦績は15戦1勝。特出した成績を収めたわけではなかった。 その馬の名前はピンシェル。名牝と謳われたメジロドーベル最後の産駒だ。ピンシェルの馬主だったレイクヴィラファーム代表の岩崎伸道氏にとってこの馬は特別な存在だった。 その背景には、波乱万丈な日々を共に生きた、人と馬の物語があった。 隆盛を極めたメジロ牧場 レイクヴィラファームの代表、岩崎伸道氏は、50年以上のキャリアの中で数多くの名馬に関わってきた。そのスタートは後に天皇賞馬メジロティターン、牝馬三冠のメジロラモーヌなど重賞勝ち馬をあまた輩出し、競馬界にその名を轟かせたメジロ牧場だった。 岩崎氏はメジロ…